DICTIONARYチーズ辞典

チーズといっても、実は個性や風味は様々。
生産国や乳種によっても、
驚くほどバラエティ豊かです。
「まずはこれを知っておけば大丈夫」
そんな基礎知識をフェルミエが
チーズ辞典としてまとめました。

WHAT IS
“NATURAL” CHEESE?ナチュラルチーズとは?

ナチュラルチーズの定義と作り方

日本ではチーズを、主に「ナチュラルチーズ」と「プロセスチーズ」の2種類に分類しています。一方海外では、チーズと言えばこのナチュラルチーズにあたります。CODEX(国際食品規格)によれば、ナチュラルチーズは「乳や脱脂乳をレンネット(凝乳酵素)などの凝固剤で固め、ホエイ(乳清)を分離したもの」と定義されています。(日本におけるナチュラルチーズとプロセスチーズの定義は後述をご参照ください)。

チーズは「大自然からの贈り物」。栄養価が高く保存しにくい乳を、微生物の力と人間の工夫によって保存性の高い、おいしいチーズに生まれ変わらせるのです。世界各地には、地域に根づいた多種多様なチーズがあります。ここでは、日本でよく見かける西欧型チーズの、基本となる製造工程をご紹介します。

チーズの製造には、大きく分けて3つの工程があります。

  1. 第1段階

    殺菌などの前処理を行なったのち、レンネット(凝乳酵素)などを加えて乳を固めます。この状態のものを「カード」と呼びます。

  2. 第2段階

    固まった乳からホエイ(乳清)を分離し、さまざまな形に形成します。この状態のものを「グリーンチーズ」と呼びます。
    注:グリーンチーズ
    脱水成形・加塩のあと熟成に入る前のチーズのことをいいます。したがって、熟成させないで食べるフレッシュチーズの場合は、グリーンチーズとはいいません。

  3. 第3段階

    一般的に熟成工程と言われ、熟成タイプのチーズはこの工程を経て風味を整えます。

ナチュラルチーズとプロセスチーズ

チーズを「ナチュラルチーズ」と「プロセスチーズ」に分けて呼ぶのは、日本やアメリカなど、プロセスチーズの消費量が高い国のみ。
ヨーロッパでは前述した通り、チーズと言えば「ナチュラルチーズ」を指しています。
ナチュラルチーズとプロセスチーズの違いは、その原料と製造方法にあります。ナチュラルチーズは新鮮な乳を加工したものに対し、プロセスチーズは、ナチュラルチーズを原料としています。

  • ナチュラルチーズ

    乳を凝固し、ホエイ(乳清)の一部を取り除いたもの。または、これらを熟成させたもの。
    チーズの中の微生物も生きているため、時間の経過とともに熟成が進み、奥深い独特の風味へと変化していきます。

  • プロセスチーズ

    ゴーダやチェダーなど、一種類、または数種類のナチュラルチーズを加熱して溶かし、形成したもの。
    ナチュラルチーズにくらべて風味が一定で、保存性が高いのが特徴です。

ORIGIN OF CHEESEチーズの起源

チーズのはじまり

明確な起源は定かではありませんが、チーズは人間によって作られた、最も古くからある食品のひとつとされています。
ポーランドにある7000年前の遺跡より、人類がチーズを製造した最古の痕跡が発見されています。また、紀元前4000年ごろの古代メソポタミアの壁画にも、人々が乳を絞り、チーズやバターを作っている様子が描かれています。
チーズは偶然の出来事が重なって誕生したと考えられています。長い歴史の中で、地域性や人々の知恵により、個性的で地域色豊かなチーズが生まれたのです。

チーズの語源

英語の「cheese」は、ラテン語でチーズを意味する「caseus/カセウス」が語源。ドイツ語の「Käse/ケーゼ」、オランダ語の「kaas/カース」も同様です。一方、イタリア語の「formaggio/フォルマッジオ」、フランス語の「fromage/フロマージュ」は、後期ラテン語でチーズを形成する型枠を表す「forma/フォルマ」が語源です。

日本におけるチーズの歴史

645年、百済からの渡来人の子孫より、牛乳を煮詰めて固めた「蘇(そ)」と呼ばれるものが天皇家に献上されています。
日本において本格的なチーズ作りがスタートしたのは、明治8年から。北海道開拓庁で、練乳とチーズを試作したのが始まりと言われています。昭和に入ると、雪印乳業(当時は北海道製酪販売組合連合会)と明治乳業がプロセスチーズの量産を開始。第二次世界大戦以降は、さまざまなナチュラルチーズが製造されるようになり、生産量も年々合増加しています。

プロセスチーズの誕生

19世紀以降、ヨーロッパからアメリカ大陸へ移り住む人が多くなり、アメリカ大陸内で流通可能な、保存性の高いチーズが求められるようになりました。1911年、2人のスイス人が、郷土料理のチーズフォンデュをヒントに、グリュイエールを加工したプロセスチーズの製造に成功。
20世紀に入り、アメリカのチーズ商人だったJ.クラフトによって、シカゴで販売されました。

CULTURE OF CHEESE世界のチーズ文化

チーズ文化の広がり方

チーズはメソポタミアで生まれました。
そして、人々の移動や交易などによって、次第に東西へと伝わり、広がっていきます。
西方向へのルートは、メソポタミアから現トルコを通過し、ギリシャ、ローマを通る地中海ルート。
また、黒海の西岸を北上し、ヨーロッパの文明と接するルート。
そして、西南に下り、エジプトへ広がるルートがあったと推測されています。
東方へのルートとして最も大きな流れとされているのは、西アジアのアーリア系民族が、水牛を伴ってインド亜大陸に侵入し、そこで成立させた乳文化です。
また、カスピ海の東岸を抜け、中央アジアのカザフスタン地域に広がった遊牧民チーズの流れもあり、これはモンゴルまで到達します。
日本の奈良、平安時代に作られていた古代チーズの「蘇」も、この経路によって伝えられたと考えられています。

チーズと地域性

チーズはその土地の気候や地形など、地域性に大きく影響すると言われています。
例えば、山岳地帯などの険しい環境で作られてきたチーズは、保存性や運びやすさを考慮し、硬く、大きく作られてきました。
一方、消費地が近い平野で作られるチーズには、小型でやわらかいものが多く見られます。
また、乳を提供してくれる動物が違えば、当然、乳量も乳質も異なります。環境に飼育が適している動物を選んだ結果、生み出されるチーズは自ずと、それぞれの個性と風味を持つことになるのです。

原産地の保護

19世紀後半のフランスでは、農産物などの不作によって横行した産地偽装を防止するため、原産地名称を保護する機運が高まりました。
1905年、「商品販売時の不正行為と食品と農産物の偽造の取り締まりによる法律」が成立。1919年には、「原産地の名称の保護に関する法律」が公布。この法律により、1925年にチーズとしては初めて、ロックフォールがA.O.(appellation d’origine)を獲得しました。
その後、1935年に「原産地名称統制法(A.O.C.)」が成立し、内容が強化されます。
これが、1952年に結ばれた、主要チーズ生産国8カ国(フランス、イタリア、スイス、オーストラリア、オランダ、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン)による、原産地名称を互いに保護することを目的とした、「ストレーザ協定」へとつながります。
さらに、1992年、欧州連合(EU)により、品質承認システム「原産地名称保護:P.D.O.」が作られました。

原産地の保護と認証マーク

A.O.P.
A.O.P.
「原産地名称保護」とも訳され、EUが規定した地理的保護表記のひとつです。
英語ではP.D.O.、イタリアやスペインではD.O.P.と表記されます。
I.G.P.
I.G.P.
EUが規定した地理的表記のひとつで、「地理的保護表示」などと訳されます。
A.O.P.
A.O.P.
EU非加盟国のスイスが、独自に規定した保護原産地呼称。

CLASSIFICATION OF CHEESEチーズの分類

ナチュラルチーズの分類

ナチュラルチーズの分類法は国によって多種多様です。日本では、フランスの分類法をアレンジした7種類がメジャー。
ただし、イタリアからの輸入チーズが多いことや、より分かりやすい分類法を検討し、6分類法が採用されることもあります。
ここでは、その6種類をご紹介いたします。


タイプ別分類表

参考文献
チーズの教本(チーズプロフェッショナル協会)
知って美味しいチーズ事典(実業之日本社)